硝酸性窒素汚染地下水

硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素は1999(平成11)年2月に要監視項目から環境基準項目に変更された。硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素は他の環境基準項目と異なり、地下水中から高い割合で検出され、環境基準値を越える地下水も広い範囲で検出されている。神奈川県は県内の各政令市とともに、1998〜2001( 平成10〜13) 年度までの4年間をかけて、県内全域を1kmメッシュに分割し、地下水のメッシュ調査を実施してきた。 硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素については、4年間で計880地点で測定を行い、平成12年度までの639地点中、527地点で検出され、うち52地点で環境基準値を超過していた。同じく1998〜2000(平成10〜12)年度に実施された地下水定点調査においても、のべ217地点中177地点で検出され、9地点で環境基準を超過していた(神奈川県環境農政部大気水質課、1998〜2001)。 硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による地下水汚染は、これまで多く見られた事業所からの有機塩素系化合物などの点源汚染と異なり、大気や地質などの自然起源、過剰施肥による農地起源、事業所排水や生活排水による人為起源など様々な要因による複合的な汚染であることが特徴である。 これら複合的な汚染原因を解明する調査手法として、近年、環境中の窒素安定同位体比を用いた方法が着目されている。これは、窒素供給源の種類によって窒素安定 同位体比がある特定の値を示す性質を利用して地下水中の窒素の供給源を推定する方法である。 これまで神奈川県内においては、大和市全域(三村ほか、1999)や津久井郡相模湖町の茶畑地域(宮下、2002)などを対象に、窒素安定同位体比を用いた地下水汚染機構の解明調査が実施されており、硝酸性窒素濃度と窒素安定同位体比との関係から、し尿・生活排水系、自然・無機肥料系及び家畜糞尿系の三つの汚染原因に区分したり、上流の茶畑における化学肥料系による施肥の地下水への影響を解明するなど、幾つかの汚染地域における窒素安定同位体比に関わる知見が得られている。 そこで本研究では、平成10〜12年度に神奈川県内で実施された地下水メッシュ調査における環境基準超過地点を中心に、県内の様々な地形・地質・土地利用条件下における、地下水中の窒素安定同位体比を調査し、地下水中の硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による汚染の原因を解明するとともに、窒素安定同位体比を用いた硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素汚染原因解明調査手法を確立することを目的に研究を行った。

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